★水木しげる先生が選ぶマイベストテン★ぬりかべも うなるほど塗る 妻の顔 てーすけ
ろくろ首 胃カメラ検査 医者泣かせ 良遊子
ウインクに つぶる目悩む 百目かな 泥泥羅門
男なら 妖怪だって かまわない 未婚厄年女
骨間から 月を望める がしゃどくろ えんらえんら
すねこすり かじらないだけ 子よりまし 三浪の母
鬼太郎を 世界に送り テロ退治 純子
温暖化 何とかしてよ 雪女 二酸化短足くん
うちの母は ほんとは妖怪 クッチャネ〜(食っちゃ寝) 妖怪花ざかり
ダイエット しすぎた妻は ガシャドクロ 和貴
★境港市観光協会会長 桝田知身が選ぶマイベストテン★○骨間から 月を望める がしゃどくろ えんらえんら
骨の間から月を見るというアングルが独創的で秀逸。がしゃどくろという妖怪の凄愴な美しさをよくとらえた○減反の 荒れた田に立つ 泥田坊 やんぴん
本来の泥田坊は、自分の田が人手に渡ってしまった無念さから出現した妖怪だが、いまや、減反で荒れ果てた田に現れるようになった。我が国の農業政策の失敗を妖怪で痛烈に風刺している。○ウインクに つぶる目悩む 百目かな 泥泥羅門
百目がウインクにつぶる目に悩むというところがおかしい。百目の困った顔が目に浮かぶようだ。○男なら 妖怪だって かまわない 未婚厄年女
句だけだと、あまり面白くないが、雅号の未婚厄年女とセットになると、とたんにおかしくなる。未婚女性の切羽詰った感じが笑いを誘う。 ○ねこ娘 じっと見上げる こいのぼり 麻也子
かつては5年連続日本一の漁獲量を誇った境港の水産業も低迷している。魚にありつけぬねこ娘がこいのぼりを食べたそうにじっと見上げる表情が、境港水産業の低迷を象徴しているようで、独特のおかしみを醸し出している。○旅の宿 化粧落として 皆妖怪 元バスガイド
化粧を落として素顔になると妖怪になる。雅号の元バスガイドが効いている。旅の宿におけるペーソスをうまく表現している。○あかなめに 出会わぬように 風呂掃除 武良三滴
武良三滴は誰あろう水木しげる先生の実弟。漫画「自伝」にあかなめと出会い恐怖のあまり、3兄弟が風呂場から逃げ出すシーンがある。「出会わぬように」という言葉には、経験に裏打ちされたリアリティーを感じる。○若返る 寒戸の婆を そっと撫で 藍緑
寒戸の婆の効能は意外にも「若々しくいられる」である。この効能を知っていないとこの句の良さはわからない。そっとなでる女心の哀れさをわかってあげたい。○妖怪が 金霊呼んでる 境街 武良二滴
金霊は黄金の精霊で、この妖怪が来るとその家は栄える。境港は文字通り、妖怪で賑わい、この縁起のいい金霊を呼び寄せているようだ。○妖精が 妖怪となる 年月や 猫婆の夫
若く美しい妖精も長い年月が経つうちに妖怪になる。光陰矢の如し。年月や、という詠嘆に何人も抗える人はいない。